【論文紹介】当センターのPETがん検診/総合コースの効果 お知らせ2020.11.30

当センターでは浜松ホトニクスおよび関連会社の従業員を対象にPETがん検診/総合コースを用いて「PET研究検診」を実施しており、受診群におけるがん罹患率やがんによる死亡率、通院・入院日数や医療費などの検証を行っています。

PET研究検診について
  分類   実施期間   受診頻度  
  Ⅰ期   2003年8月~2009年7月   1年に1回   ➡  今回の研究報告の対象
  Ⅱ期   2009年11月~2019年10月   2年に1回  
  Ⅲ期   2019年11月~2029年10月   2年に1回  
 

 
今回はⅠ期の結果に基づき、PETがん検診の受診によって、がんによる死亡率および一般的な死亡率を低下させる可能性があるという研究報告を当センターの院長である西澤医師らより、日本核医学会の“Annals of Nuclear Medicine (2020)”に致しましたのでご紹介いたします。1)

●概要のご紹介

本研究では当センターでPETがん検診/総合コースとして提供しているような複数検査での全身がん検診(以下、PETがん検診)の効果を一般的な集団のデータと比較することで検証しています。
 
浜松ホトニクスおよび関連会社の従業員で35歳以上の方のうち、1,197名の方に参加※1していただきました。参加者には、会社で実施される健康診断やがん検診(バリウム検査・マンモグラフィ検査など)とは別で継続的に年1回のPETがん検診を5回受診していただき、2014年末まで追跡調査を実施しています。([図1参照])
[図1]研究の概要
その結果、一般的な集団と比べ、がんの罹患率は高くなったものの、がんによる死亡率だけでなく、がんに限らない死亡率も低下していることが分かりました。

このような結果になった理由として以下のような可能性を考察しています。

【1】がんの罹患率が高い
 ➡ 広範囲を検査したため、他の検診では見つからないがんが見つかった

【2】がんの死亡率が低い
 ➡ このような全身を対象としたがん検診の価値を示している

【3】一般的な死亡率も低い
 ➡ 検診における医師による繰り返しの健康指導の効果も影響している
 
一方で、検診で発見されたがんがすべてPET検査で見つかっているわけではなく、検診に含まれる様々な検査によって発見されていることから、複数の検査を組み合わせることの重要性も示唆されています。

●本研究から当センターが考えること

本研究から当センターで実施しているPETがん検診を定期的に受診することで、死亡率を低下させる可能性があることを確認することが出来ました。当センターでは現在、Ⅲ期の検診を実施※2しておりますが、Ⅱ期では死亡率だけでなく、入院や通院の日数、医療費などの低下も見られておりますので、今後、ご紹介させていただきたいと考えています。
当センターでは、今後もこのように検診の効果の確認やその検診の提供、検査項目や運用方法の見直しなどを繰り返しながら、がんなどの疾患に対する不安を取り除き、1人でも多くの方の健康長寿に寄与していきたいと考えております。
 

※1 自由参加にて募集。2003年8月から2004年7月の間に1回目の受診をしています。
※2 2009年以降も2年に1回の間隔で継続的に受診希望者を募り、実施しています。
 
1)Nishizawa, S., Kojima, S., Okada, H. et al. Ten-year prospective evaluation of whole-body cancer screening with multiple modalities including [18F]fluorodeoxyglucose positron emission tomography in a healthy population. Ann Nucl Med 34, 358–368 (2020).
https://doi.org/10.1007/s12149-020-01456-9