がんと感染 ~ヒトパピローマウイルス(HPV)~ コラム2020.11.09

以前のコラム「がんと感染症 B型・C型肝炎ウイルス」の中で、肝臓がんの原因となる肝炎ウイルスについて紹介いたしました。今回は主に子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(以下、HPV)についてお伝えしたいと思います。

HPVについて

HPVは100を超える種類があり、身の回りにありふれた誰でも感染する可能性のあるウイルスです。HPVは子宮頸がんの原因となることが広く知られていますが、それ以外にも咽頭がん・肛門がん・膣がん・外陰がん・陰茎がんなどの原因にもなると考えられています。このような主にがんの原因となるものをハイリスクHPVと言い、尖圭コンジローマ等良性疾患の原因とされるものをローリスクHPVと言います。

【HPVの主な分類】
ハイリスクHPV  16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、66、68型など
ローリスクHPV  6、11、42、43、44型など

HPVと子宮頸がん

さて、HPVと聞くと子宮頸がんを思い浮かべる方が多いと思います。実際に子宮頸がんの原因の9割以上はHPVであると言われています。ウイルスが子宮頸部に感染する経路としては性的接触が挙げられ、性交渉の経験がある女性の大部分はHPVに感染していると推計されます。感染後、ほとんどの場合は2年以内に排出されますが、持続的に感染した場合は細胞の異常(前がん病変)を生じ、一部は子宮頸がんに進行することが分かっています。
HPVの感染と子宮頸がんの進行

予防

HPVはワクチンが開発されており、2価・4価・9価の3種類があります。
2価はハイリスク型の中で、子宮頸がんの原因の約7割を占める16型・18型の感染を防ぎます。4価はそれに加え、ローリスク型の6型・11型の感染も防ぐワクチンです。9価については2020年5月に日本でも承認され、上記の4種類の型に加え、5種類の感染を予防することができます。2価・4価で約6~7割、9価では約9割の子宮頸がんを予防できると言われています。
スウェーデンで全国民のデータベースを用いて行われた2006年から2017年の調査では、4価ワクチンを接種することで子宮頸がんのリスクを63%下げることができたと報告されています。(N Engl J Med 2020; 383:1340-1348.)
 
  対応しているウイルスの型
ローリスク ハイリスク
6 11 16 18 31 33 45 52 58
2価              
4価          
9価
 
なお、2価と4価は、ほとんどの自治体で小学校6年生から高校1年生に相当する年齢の女子について定期予防接種として無料接種が可能です。
上記以外の方が接種する場合でも自費4~5万円で接種が可能ですが、年齢によっては効果が立証されていない場合がございますので、婦人科の専門医にご相談のうえ、ご検討ください。(これまでの研究では26歳以下は推奨、27~45歳は要相談とされています)

【参考情報】

・厚労省「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」 
・日本産婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
・「HPVワクチン」川名敬〔ウイルス 第 62 巻 第 1 号,pp.79-86,2012〕
看護師 (005-1)