がんと感染 ~B型・C型肝炎ウイルス~ コラム2020.10.12

現在、新型コロナウイルスが世界中に大きな影響を与えておりますが、以前のコラムでご紹介した通り、がんもウイルスや細菌への感染と関係しております。そこで、今回は肝がんの要因となるB型・C型肝炎ウイルスについてご紹介いたします。

肝炎ウイルスについて

肝炎ウイルスは感染するとウイルス性肝炎という肝臓の病気を引き起こし、肝臓の細胞が壊れて、肝臓の働きが悪くなります。肝炎は、倦怠感・食欲不振・吐き気・黄疸(皮膚が黄色くなること)などの症状が出ることがありますが、全く症状が出ないことも少なくありません。そのため、感染に気付かず、肝炎が慢性的に持続すると肝硬変を引き起こし、結果的に肝がんに繋がることがあります。
肝がんに至るまでの変化
この肝炎ウイルスは肝がんの最も大きな要因であるといわれています※1。肝炎ウイルスにはA、B、C、D、E型などがあり、A ・E型は主に食べ物、B・C・D型は主に血液を介して感染します。そのうち、肝がんの主な要因となっているのはB・C型肝炎ウイルスです。

※1最近では肝炎ウイルスへの感染を伴わない、非アルコール性脂肪肝炎などによるものが増加してきているという報告もあります。

B型・C型肝炎ウイルスについて

B型・C型肝炎ウイルスの感染者はそれぞれ100万人を超えており、国内最大の感染症といわれています。近年は、ワクチンや治療薬の開発、国による医療費の助成などにより感染者・発病者に対するケアは充実してきておりますが、感染していても症状がないことが多いため、検査受診による感染確認が課題となっております。
B型肝炎とC型肝炎に関するデータ

B型肝炎ウイルス

主に血液ならびに体液を介して感染します。肝がんの発生要因の15%を占めます。一過性の感染(一過性感染)に終わるものと生涯に渡って感染が継続するもの(持続感染)に大別されますが、出生時あるいは3歳未満の乳幼児期の感染によって持続感染となるケースが多いことから、持続感染している母親からの出産時感染予防対策や0歳児に対するB型肝炎ワクチンによる予防などが行われています。一方、持続感染している場合、抗ウイルス薬等による治療を行っても完全排除は期待できず、継続的な治療が必要となります。

C型肝炎ウイルス

主に血液を介して感染します。肝がんの発生要因の約60%を占めますが、治療法の確立などによって減少傾向にあります。感染者の約70%が持続感染者となりますが、自覚症状がないこともあり、症状がないまま、20~30年で肝がんへと進行していきます。ただ、治療によって完全排除できることが分かっているため、早めの検査によって感染を確認し、治療することが重要となります。

肝炎ウイルス検査を受けましょう

肝炎ウイルスに関しては早期に治療すること、他人に感染させないためにも早めの検査が重要です。市区町村によって無料で検査が可能です。また、当センターのPETがん検診の項目にもB型・C型肝炎検査が含まれております。ご活用ください。

参照情報一覧 (肝炎に関する情報収集にお役立てください)

・厚生労働省「肝炎総合対策の推進
・厚生労働省「知って、肝炎プロジェクト
・国立研究開発法人 国立国際医療研究センター「肝炎情報センター
・国立がん研究センター「がん情報サービス
・浜松市「肝炎ウイルス検査(B型・C型)について
 
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