肺がんについて コラム2020.08.18

罹患者数・死亡者数

肺がんは罹患者数・死亡者数ともに多いがんです。罹患率は40代から上がり始め、65~90代まで上がり続けます。2018年の部位別がん死亡者数では7万人を超える方が亡くなっており、他のがんに比べ非常に多いことが分かります。罹患・死亡について、いずれも女性に比べ男性の方が多いことが特徴です。当センターにおいてもこれまでに60例以上の肺がんが発見されており、最も発見数が多いがんとなっております。
肺がんの年齢階級別罹患率(2017年)と部位別死亡数(2018年)

肺の構造

肺の構造
肺は左右に1つずつあり、更に右肺には3つ、左肺には2つの肺葉と呼ばれるブロックに分けられています。口や鼻から吸い込まれた空気は気管を通って体内に入ってきた後、木の枝の様に気管支が左右に分かれ、それぞれの肺に入っていきます。この気管支に分かれる部分を肺門、肺門以外の肺の本体部分を肺野といいます。また、気管支の先には肺胞という小さな袋があり、酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出しています。


 

がんの分類

肺がんは組織型によって非小細胞がん小細胞がんの2つに大きく分けられます。非小細胞がんは更に腺がん扁平上皮がん大細胞がんに分類されます。
発生頻度が最も多いのは腺がんで、増殖速度が速く、転移や再発をしやすいのは小細胞がんです。
がんの分類

症状

咳や痰、血痰、発熱、息苦しさ、動悸、胸痛などがありますが、いずれも肺がん以外の病気にもみられる症状で「これがあれば肺がん」という症状はありません。これらのうち、複数の症状がみられる場合や長引く場合には早めに医療機関を受診してください。また、これらの症状がないうちに進行する場合もあります。

発生要因(危険因子)と予防

肺がんの発生は以下のような項目が主な要因と考えられています。特に喫煙者は非喫煙者と比べて男性で4.4倍、女性で2.8倍肺がんになりやすいと言われております。また、喫煙に伴う副流煙及び呼出煙(吐き出された煙)にはより多くの有害物質が含まれており、肺がんのリスクを1.3倍高めると考えられています。
予防としては禁煙やたばこの煙を避けることが重要です。禁煙から10年後には禁煙しなかった場合と比べて肺がんのリスクを約半分減らせることが分かっています。ただ、たばこを吸っていない方でも肺がんは発生します。一般的ながん予防として節度ある飲酒、バランスのよい食事、運動などが予防として効果的と言われています。

●肺がんの主な発生要因
 □ 喫煙 □ 受動喫煙 □ 職業的暴露(アスベスト、ラドン、ヒ素、クロロメチルエーテルなど)
 □ 大気汚染(特にPM2.5による汚染) □ 家族に肺がん罹患者がいる □ 高齢

検診

当センターの肺がん診断例
肺がん検診は集団を対象とした対策型検診として胸部X線(レントゲン)検査・喀痰細胞診および問診を組み合わせた方法が推奨されており、対象は40歳以上で受診間隔は年に1回が良いとされています。
一方、胸部X線検査では骨や心臓などの臓器に重なって肺がんを発見しにくい場合があります。そこで身体の断層画像(輪切り)を撮影可能なCT検査による肺がん検診の研究が国内外で進められており、より小さく、より早い時期の肺がんを発見できることが分かってきており、早期発見や死亡率の低下を示す報告もされています。※1
当センターの検診は、PETがん検診/総合コースではPET検査とCT検査にて、肺がんに特化した肺がんCT検診ではCT検査にて肺がんの早期発見を目指しています。ぜひ、ご活用ください。

まとめ

  • 40代からは罹患率が上がります。無症状でも定期的な肺がん検診を受けましょう。
  • 喫煙者・受動喫煙の機会(家庭や職場など)が多い方などはCT検査による肺がん検診も活用しましょう。
  • たばこを吸われている方は禁煙をしましょう。
 
※1 欧米では大規模無作為比較試験において死亡率の低減が示され、公的医療保険の適用や検診の導入準備が行われています。また、日本国内においても様々なトライアル(JECS STUDY)や研究(Nawa T,Fukui K,Nakayama T, et al. A population-based cohort study to evaluate the effectiveness of lung cancer screening using low-dose CT in Hitachi city, Japan. JJCO,2019,49(2)130-136)などが行われており、平成29年度厚生労働省調査では235の市区町村でCT検診が実施されています。
診療放射線技師 (004-2)