がんの予防 コラム2021.04.26

近年ますます高齢化が進み、がんの罹患率は上昇し続けています。生涯で2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんで死亡する世の中です。人間、誰しもいずれは死ぬものですが、できればがんの進行に伴う痛みや苦しみは御免被りたいものです。それゆえ、がんにならないように予防できれば、それに越したことはありません。今回はがんの予防についてお話したいと思います。

がんの予防

がんの予防において文字通りがんにならないように努めるのが、一次予防と呼ばれるものです。当センターで行っているようながん検診で、発症前のがんを早期発見・早期治療することでがんの発症を予防するものが、二次予防と呼ばれています。
ここでは一次予防について主なものをお話しします。一次予防ではがんの発症に関連する要因を知り、それを取り除くことが重要となります。

喫煙

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誰もが疑わない影響の強い単一の要因としては喫煙が挙げられます。タバコの煙には多数の発がん物質が含まれ、肺や喉頭、口腔・咽頭など直接煙が接する部位だけではなく、肺から血中に移行し多くの臓器でがんの発生を増加させます。また、心疾患や肺疾患など他の疾患リスクも高まり、さらには受動喫煙により、配偶者のがんや乳幼児の突然死などのリスクも増加します。がんの予防にはまずタバコを吸わないことが非常に大事です。

飲酒

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喫煙とともに飲酒も喉頭や食道、大腸、肝臓、乳腺などのがんのリスクを高めます。タバコを吸いながら一杯やる方はまだ多いようですが、喫煙される方が飲酒されると交互作用でさらにがんのリスクは高くなると考えられています。タバコを吸わないことに加えて、過度に飲酒しないこともがん予防にとって大事です。

感染症

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色々な感染症が発がん要因となることもよく知られています。国立がんセンターの研究では、日本においては喫煙と同程度に強い発がん要因であることが示されており、特に喫煙率の低い女性では感染性要因が最も高いがんのリスクであることが示されています。ただ、B型、C型肝炎ウィルスやピロリ菌の保有率は最近では減少傾向にあり、さらに抗ウィルス薬や除菌治療で将来の肝がんや胃がんの発生リスクを下げることが可能と考えられます。また、HPVワクチンによる子宮頸がんの予防にも期待がもたれます。

食生活

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がんの発生要因を調査した欧米の研究では、食物の影響が喫煙と同様に高い要因として挙げられています。例えば、半世紀近く前のデータですが、ハワイに移住された日本人一世と二世のがんの発生頻度は元の宮城県の方と比較して、胃がんは1/2、1/3と低下が見られ、乳がんは3倍、5倍、大腸がんはともに4倍と増加が見られました。これは赤身の肉や高脂質、高カロリー食が増加し、野菜や果物の消費や身体活動が減少するなど、食生活を中心とした生活環境が変化し(欧米化、都市化)、がんの発生に影響しているものと思われます。実は同様の変化はこの数十年の間に国内でも起こっています。衛生環境の改善や塩蔵食品の減少で胃がんや肝がんなどは減少する一方で、食の欧米化に伴い、もともと日本では発生頻度の少なかった乳がんや大腸がん、前立腺がんなどが増加しています。さらにこれは日本だけではなく発展途上の国が発展し都市化されていく過程で、多かれ少なかれどこでも起こってくる変化のようです。喫煙や飲酒とは違い、なかなか実感しがたいですが、知らないうちに影響を受けているものと思われます。

がんを防ぐための新12か条

さて、以前に国立がんセンターから示された「がんを防ぐ12か条」では、一次予防に必要な項目が示されていました。2011年に公開された「がんを防ぐための新12か条」では、それに加えて二次予防として定期的な検診が勧められています。
がん予防の12か条
がんの予防で大切なことは、本日お話した一次予防だけ、あるいはがん検診による二次予防だけを行うのではなく、一次予防を若い時から始め、二次予防としてがん検診で定期的に健康をチェックし、異常があれば病院を受診する事です。また、検診結果が良好でも身体の異常に気が付けば病院を受診すること、正しい情報でがんを知ることはとても大事です。我々の提供するがん検診や情報提供も皆様のがん予防に役立てば幸いです。
 
参考
医師 (004)