MR検査を理解しよう! コラム2019.08.10

MR検査って何?

MR検査というのは、“強力な磁場の力を用いて身体内の断面を画像化する検査”です。
下の模式図のように、普段は様々な方向を向いている身体内の水や脂肪などの中に存在する水素原子核は(①)、強力な磁場を発生させる装置内では同じ方向を向くようになります(②)。そこでRFパルスという電波を身体に照射すると一定の方向に向きを変えます(③)。その後、RFパルスを切ると水素原子核が磁場と平行方向に戻ろうとした際に信号が放出されます(④)。戻る速さによって異なる信号を受信器で受け取って画像処理を行うことにより、身体内のあらゆる断面を画像化する検査です。
MR検査の仕組み

CT検査との違いは?

よく「CT検査と何が違うの?」という質問があります。2つの検査はどちらも身体内の断面を画像化する検査ですが、一言で言うと画像を取得する手段が異なります。
MR検査では、上記の通り“電波”を使って脂肪や骨、水分などの組織を判別して画像化しますが、CT検査は“X線”という放射線を身体に照射し、透過してきたX線の量を受信器で受け取って組織を判別して画像化します。画像を取得する手段が違うため、それぞれ得意とする部位や臓器も異なり、骨などX線が透過しにくい組織に囲まれた脳や密度の高い骨盤部ではMR検査、肺のような密度の低い部位や腹部など呼吸によって動く部位は撮影時間の短いCT検査がよく用いられます。
なお、欠点として、MR検査は大きな音がする点や体内に金属がある方は禁忌の場合があるという点、CT検査は少量の被ばくを伴うという点が挙げられます。
MR検査とCT検査の比較表

様々な画像を得られるMR検査

MR検査は身体内にある水素原子核から放出される信号を受け取って画像化しますが、水素原子核がどのような分子状態で存在しているかによっても放出される信号に違いが生じます。このような特性を利用することでMR検査では様々な種類の画像を取得することができます。例えば、
  • 脂肪成分等が見やすくなるように強調して画像化した「T1強調画像」
  • 水成分等が見やすくなるように強調して画像化した「T2強調画像」
  • 血液のように流れている水成分を画像化した「MR angiography(MRA)」
  • 急性期の脳梗塞や癌等が見やすくなるように強調して画像化した「拡散強調画像(DWI)」
などがあり、必要な情報に合わせた画像を取得することが可能となっています。
MR画像例とCT画像例
MR検査は応用の仕方で様々な画像が取得できる非常に奥が深い検査と言えます。
MR検査を受ける際には「今、身体内の水素原子核が同じ方向を向いているのかな?」と想像してみてはいかがでしょうか。
診療放射線技師 (001)